880
全山石 ( b.1930 - )
会員限定
油彩、キャンバス 額装 1980年
サイン。
裏に"贈 田中英子先生 1980"の記載あり。
裏に作品シール:浙江美術学院美術展。
来歴:関東、個人コレクション
本作は全山石が果物と水差しを題材に構成した静物画である。葡萄、メロン、林檎などの果実が厚みのある筆致と豊かな色彩で描かれ、生き生きとした質感を醸し出している。反射光や微妙な陰影の表現がさらに対象物の存在感を強調している。背景には縞模様の布が敷かれ、画面に奥行きと詩的で穏やかな雰囲気を漂わせている。
1980年代、全山石は新疆やチベットなど中国西部を広く旅し、民族衣装をまとう少数民族の人物肖像や雄大な自然景観を描いた。本作に描かれた茶器や布もまた、これらの地域の伝統的な器物や織物に由来しており、文化的な気配を喚起している。
作品は単なる写実にとどまらず、光と色の重なりを通して情感と精神性を表現している。静物という題材を通じて「物に宿る生命」とその背後にある文化的物語への深いまなざしが示されている。
作品の裏面には「贈 田中英子先生 1980」との記載がある。服飾研究者の田中英子は全山石の姪が服飾を教えていた大学に招かれ講義を行った。その際、姪が叔父である全山石に依頼して制作された本作が、感謝のしるしとして田中に贈られたものである。
全山石は江蘇省宜興出身の中国画家である。中央美術学院華東分院卒業後、ソ連レーピン美術学院に留学し、帰国後は中国美術学院教授を務める。中国油絵学会副主席、中国美術家協会油絵芸術委員会副主任など要職を歴任。新疆ウイグル自治区の風景や文化をテーマに油絵を制作し、高い評価を得ている。
58.2×72.0cm
(22 ⅞ × 28 ⅜ in.)(F20)
2025/10/23
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