1807
陳逸飛 ( 1946 - 2005 )
会員限定
油彩、キャンバス 額装
サイン。
出版:「EXHIBITION IN JAPAN '90 陳逸飛」P.32、西武百貨店、1990年
展覧会:陳逸飛展(東京/西武百貨店)1990年
陳逸飛は、中国と西洋、伝統と現代を結びつけた芸術家であり、いわば「文化の翻訳者」ともいうべき存在である。ニューヨークで西洋美術を学ぶ一方、中国文化に根ざした詩情と精神性を持ち続け、優雅さと叙情性を備えた独自の「ロマンティック・リアリズム」の作風を確立した。江南の水郷風景、上海の女性像、チベットの人々など、多様な題材を描いたその作品には、時代や地域を超えた普遍的な美が息づいている。その芸術は中国現代美術の表現領域を広げるとともに、中国美術を国際的な舞台へと導く重要な役割を果たした。
渡米後、陳逸飛は東洋的な美意識と西洋の写実技法を融合した独自の絵画表現によって、次第に国際美術界から注目を集めるようになった。ニューヨークのハマー・ギャラリーをはじめとする各地で展覧会を開催し、その作品は美術市場においても高い評価を得た。1980年代末から1990年代初頭にかけて、日本の美術市場が活況を呈するなか、陳逸飛も東京へと活動の場を広げ、西武百貨店において重要な個展を開催している。
本作は、1990年に東京の西武百貨店で開催された陳逸飛展に出品された作品の一つであり、展覧会および図録への掲載記録が確認されている。作品の主題、作風、署名、制作年代はいずれも、当時の陳逸飛の制作活動や関連出版資料と符合しており、来歴も明確である。
本作が一般的な市場流通作品と比べて特に注目されるのは、1990年の日本での展覧会にまで遡ることのできる明確な歴史的背景を備えている点にある。陳逸飛の成熟期における代表的な作例であると同時に、その芸術が日本市場へ紹介され、アジアのコレクターから注目を集めていった過程を物語る重要な作品でもある。展覧会歴、図録への著録、明確な来歴が相互に裏付け合う本作は、コレクションとしてのみならず、陳逸飛の国際的な活動を考察するうえでも、きわめて貴重な価値を有している。
陳逸飛が1980年代に手がけた「音楽家シリーズ」は、音楽を題材としながらも、演奏そのものではなく、そこに宿る「静寂」に本質を見出している。本作においても、フルートを手にした女性は演奏中ではなく、その前後に流れる静かなひとときの中に描かれている。抑制された色彩とドラマティックな明暗表現が人物の内面を際立たせ、画面に静けさゆえの緊張感と余韻をもたらしている。写実を超えて情感を表現するその描写には、陳逸飛が追求した「ロマンティック・リアリズム」が色濃く表れている。
61.0×56.0cm
(24 × 22 in.)
2026/10/21
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