1856
棟方志功 ( 1903 - 1975 )
会員限定
墨、和紙 掛軸
印「棟方志功」。
共箱:サイン、タイトル。裏に萬里水雲長慈航又何處棟方志功自題、印「棟」。
来歴:東京、K's Gallery
棟方志功は、日本近代版画を代表する芸術家の一人であり、日本の木版芸術を国際的に広く知らしめた重要な存在である。柳宗悦が提唱した民藝運動の思想に深く共鳴しながら、木版を単なる複製の手段ではなく、芸術家の精神や生命力を直接表現する創作媒体として捉え、独自の芸術世界を築いた。また、自らの木版作品を「板画」と称し、その芸術理念を明確に示した。
力強く奔放な刀痕、躍動感あふれる線、鮮烈な黒と白の対比を特徴とするその作品には、仏教思想や自然への畏敬、生命への深いまなざしが色濃く表れている。《釈迦十大弟子》《二菩薩釈迦十大弟子》《大世界の柵》などの代表的なシリーズは、棟方芸術を特徴づける豊かな精神性と独創的な造形表現を示している。
1956年にはヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展において版画部門の国際大賞を受賞し、その芸術は世界的に高く評価されるようになった。作品は東京国立近代美術館、国立国際美術館、青森県立美術館をはじめ、国内外の主要美術館に収蔵されている。棟方志功は、木版表現の可能性を大きく切り拓くとともに、日本の近代版画を世界へと広めた芸術家として、日本近代美術史において重要な位置を占めている。
《慈航》は、棟方志功が生涯を通じて向き合った仏教思想を、力強く奔放な書によって表現した作品である。「慈航」とは、仏・菩薩の慈悲を舟にたとえ、苦しみの世界にある衆生を救い導くことを意味し、観音信仰とも深い関わりをもつ。画面いっぱいに揮毫された二文字は、濃淡に富む墨色と躍動的な筆勢によって豊かなリズムを生み出している。
棟方にとって書は、言葉の意味を超えた独立した視覚表現であり、書と画を一体として捉える独自の芸術観が表れている。作品裏面には「萬里水雲長 慈航又何處」と自題され、作品に静謐で奥深い精神性を加えている。力強い筆墨と宗教的思索が融合した本作は、棟方晩年の成熟した書表現を示している。
97.0×60.0cm
(38 ¼ × 23 ⅝ in.)
2026/10/21
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