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会員限定
油彩、キャンバス 額装
サイン。
東郷青児鑑定委員会発行鑑定書。
来歴:関東、個人コレクション
東郷青児の婦人像は、彼の生涯を通じて象徴的なテーマであり、優美で幻想的な女性の姿が特徴である。彼の作品には若い頃に滞在したパリでの経験が色濃く反映されている。初期の頃はキュビズムやシュールレアリスムの影響を受け、鮮やかな色彩や大胆な構図で女性像を描いたが、後年には日本的な美意識が加わり、柔和な筆致と落ち着いた色彩によって、穏やかな美しさを表現するようになった。西洋画の技法を基盤にしながらも、日本的な穏やかさや静けさを表現し、その結果、見る者に深い癒しと感動を与える作品として評価されている。特に、少し遠くを見つめる女性の表情や、柔らかくたおやかな姿勢は、女性の内なる強さや優しさを象徴しているとされる。
伏せた長いまつげと柔らかい曲線のボディラインをもつ、優雅でありながら神秘的な2人の女性が描かれたこの作品は、「東郷様式」とも称される独特の美意識が表現されている。背景には幾何学的な形と奥には雲や山のようなものが描かれ、モダンな雰囲気と、どこか夢幻的な要素が組み合わさっている。
東郷青児(1897-1978)は、日本を代表する洋画家の一人である。1915年、18歳のときに初の個展を開催し、前衛的な未来派の作風で注目を集める。翌1916年、第4回二科展に《婦人像(陽傘の女)》を出品し、二科賞を受賞。本作は日本における最初期の前衛絵画のひとつとされている。1921年からフランスに渡り、7年間にわたり美術館で西洋絵画の技法を学ぶ。滞在中、未来派の創始者フィリッポ・トンマーゾ・マリネッティと出会い、ピカソとも交流を持ちながら、前衛的な作風から新古典主義とシュルレアリスムを融合した表現へと移行していった。帰国後はモダニズム文化を積極的に取り入れ、装丁、挿絵、壁画など幅広い分野で活躍。次第に西洋的なモチーフを取り入れながら独自の美意識を確立し、柔らかで幻想的な女性像「東郷美人」を生み出した。この独自のスタイルは「東郷様式」として広く知られ、現在もなお多くの人々に影響を与えている。
162.0×227.0cm
(63 ¾ × 89 ⅜ in.) (F100)
2025/04/19
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