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吉原治良 ( 1905 - 1972 )
会員限定
油彩、キャンバス 額装 1953年
額裏にサイン、制作年。
来歴:銀座、東京画廊。
1953年は、吉原治良の画業における大きな転機の年であった。前年、彼は「ピッツバーグ国際現代絵画彫刻展」で受賞を果たし、翌1954年には長谷川三郎、山口長男らとともに「日本アブストラクト・アート・クラブ」を設立している。こうした流れの中で、吉原の抽象表現主義への傾倒はいっそう深まり、関西の若手芸術家15名とともに「具体美術協会」を創設する基盤を築いた。
この年に描かれた作品は、従来の抽象様式から大きく飛躍し、より力強い筆致と鮮烈な色彩対比を特徴としている。画面を満たすダイナミックな筆勢は内なるエネルギーを可視化し、西洋の抽象表現主義と東洋的感性が融合した独自の様式を示している。具体の創立直前という過渡期に位置づけられるこれらの作品は、技術的な完成度の高さを示すと同時に、後の前衛美術運動の方向性を予示する重要な成果となっている。
吉原治良、日本の抽象画家、実業家。1954年、戦後関西を代表する芸術運動「具体美術協会」を創設。創設翌年に第1回展を開催、68年まで21回の具体美術展を国内のみならずニューヨークやトリノでも開催して、国際的な美術運動の一翼を担った。近代絵画を継承するのではなく、「人の真似をするな。今までにないものをつくれ」という思想のもと、白髪一雄や元永定正など多くの芸術家を輩出した。自身では黒地に大きく白い円を描くなど円形を題材にした作品が有名である。
主な収蔵先:東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立国際美術館、東京都現代美術館、兵庫県立美術館、神奈川県立近代美術館、富山県美術館、大原美術館、大阪中之島美術館。
32.9×24.2cm
(12 ⅞ × 9 ½ in.)(F4)
2025/10/23
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