864
李禹煥 ( 1936 - )
会員限定
鉛筆、紙 額装 1979年
サイン、制作年。
裏に"No.7908"、サイン。(額装前写真にて確認)
来歴:名古屋、ギャラリーたかぎ
本作《Untitled》は、李禹煥が1970年代後期に手がけた素描の中でも、線を通して思索と行為の痕跡を繊細に可視化した典型的な一例である。画面には手描きの鉛筆線が等間隔に並び、反復と微妙な差異によって静かに共鳴し合う。李はこの時期、筆跡や素材そのものの呈示を通じて、絵画を単なる「描かれた対象」ではなく、「出来事として起こるもの」として空間に介入させようとした。本作においても、各線には明確な始点と終点があるが、わずかな揺らぎや偏差を帯び、身体性と時間性の感覚を伝えている。
1979年は、李が日本と韓国の双方で国際的な注目を集め始めた時期であり、その思索的な芸術理念は、このように極めて簡潔な素描という手段の中にも凝縮されている。無題という設定は、作品に固定的な意味を与えることを避け、観ること・考えることそのものを促すという彼の態度を体現している。裏面に記された「No.7908」は、当時のアトリエにおける体系的な制作過程を示す作品管理番号である。
李禹煥、もの派を代表する作家として国際的に活動している美術家。1956年に来日し日本大学で哲学を学び、東洋と西洋のさまざまな思想や文学を吸収し、そして「もの派」と呼ばれる動向を牽引した。2011年グッゲンハイム美術館(ニューヨーク・アメリカ)や2019年ポンピドゥ・センター・メス(フランス・メス)など、世界の名だたる美術館で個展を開催。 2010年に直島に安藤忠雄とのコラボレーションによる李禹煥美術館を開館。釜山市立美術館敷地に「李禹煥ギャラリー(Space LeeUFan)」を開設している。
主な収蔵先:ニューヨーク近代美術館(MoMA)、グッゲンハイム美術館、ポンピドゥー・センター、テート・ギャラリー、東京国立近代美術館、国立国際美術館、京都国立近代美術館
28.0×75.5cm
(11 × 29 ¾ in.)
2025/10/23
会員サインイン